鼠径ヘルニアについて

【鼠径ヘルニアとは】

足のつけ根の部分を鼠径部と言いますが、立ったときやお腹に力を入れた時にその部分がふくらんでしまう病気を鼠径ヘルニアといいます。これは、主に加齢などによって鼠径部の筋肉が弱くなり、筋肉の隙間から腸や脂肪組織が皮下に出てきてしまうのが原因です。自然に治ることはなく、治療するには手術をする必要があります。ヘルニアの手術は国内で年間に15万件以上行われており、とてもよくある病気です。

(鼠径ヘルニアのイメージ図)

【症状】

横になると引っ込むような柔らかいでっぱりを鼠径部に触ります。ほかに、ひきつるような痛み、つっぱり感、便秘などが起こることもあります。脱出した腸が戻らなくなることを嵌頓といい、その場合緊急手術が必要になることがあります

【検査】

CTでうつ伏せになり腹圧をかけて撮影することで、ヘルニアの詳細な状況がわかります。また、手術に耐えられるか判断するため、血液検査、心電図や心臓のエコー、呼吸機能などの検査も行います。

【治療法】

ヘルニアの治療は手術しかありません。筋肉が弱って隙間があいた部分をメッシュという人工物で補強するのがこの手術の本質です。最も歴史が古い手術が鼠径部切開法で、局所麻酔や腰椎麻酔でも行えるので手術のリスクが高い方も行うことができます。最近では腹腔鏡を用いた手術が主流になっており、こちらは全身麻酔で行います。

【当院における治療の特徴】

当院では腹腔鏡手術(TAPP法)をまずおすすめしています。痛みの軽減、入院期間の短縮、左右同時に手術ができるなど、多くの利点があります。傷はへそに一箇所、臍の左右5cmくらいのところに1箇所ずつの合計3箇所になります。それぞれの傷は5mm〜10mm程度で術後はほとんどわからなくなります。入院期間は3〜4日程度です。

(腹腔鏡下手術のイメージ。弱い部分にメッシュをあてて補強します。)

ハイブリッド手術:他院で行った再発症例や、ダビンチを使用した前立腺手術後のヘルニア症例などは、腹腔鏡でヘルニアの様子をよく観察して、必要に応じて鼠径部切開も併用して治療するハイブリッド手術を行うことがあります。これにより難症例であっても再発を防ぎ確実に治療することを目指しています。
・心臓や呼吸器に疾患がありリスクが高い場合は、鼠径部切開法をおすすめすることがあります。この場合は約5cm程度の創になります。

(鼠径部切開法のイメージ。こちらは穴の部分に傘のようなメッシュを入れて、さらに平らなメッシュを用いて弱い部分を補強します。)

ダビンチ手術:ダビンチというロボットを用いた鼠径ヘルニア手術を、当院で行っております。傷は腹腔鏡手術とほぼ同じですが、立体的な視野で、ロボット特有の関節を利用したより精密な手術を行います。またメッシュを固定するためにプラスチックの固定具を使わず糸で縫合するため、術後の痛みが軽くなるとされています。自費診療となりますので、詳しい金額につきましては外来でご説明いたします。

(手術ロボットであるダビンチのイメージです。術者が左のコンソールに座って、中央のロボットを操作して手術を行います。)

【女性に多い鼠径ヘルニア】

大腿ヘルニア:鼠径部ヘルニアの一種ですが、通常よりも下の方から腸管が脱出します。穴が狭いため嵌頓し、緊急手術になることが多いです。

(大腿ヘルニアのイメージ。大腿ヘルニアは多くが嵌頓して、緊急手術となります。)

ヌック管水腫:若年〜中年の女性に起こる病気で、鼠径部に残った腹膜が袋状になり水が溜まってしまう状態です。CTなどの画像をよく検討して、適切な手術で水が溜まった袋を取り除きます。

手術を行ったあとは、個人差はありますが一週間後くらいから日常生活は問題なくできるようになります。腹圧がかかるような仕事は一ヶ月程度控えていただきます。

鼠径部ヘルニアでお悩みの方は多くいらっしゃいますが、自然に治ることはない病気です。外来で詳しくご説明させていただきますので、お早めの受診をおすすめいたします。

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