呼吸器外科

2026年3月、肺癌に対するアルゴンガスを用いた凍結治療が“保険適応”になりました。

柏厚生総合病院では原発性肺癌および転移性肺癌に対して
●アルゴンガスを用いた凍結治療
●ラジオ波治療
を保険適応で行っています。

●但し、液体窒素を用いた凍結治療は未だ保険適応ではないため自費診療となります。液体窒素の場合、治療費+入院費+消費税込みで60万円です。腫瘍が大きい、腫瘍が2箇所ある場合には、針を2本使用します。針1本が15万円ですので、その際には60+15=75万円となります。

肺癌に対する“切らない、手術をしない”で治す低侵襲治療    『ラジオ波治療』及び『凍結治療』、および『凍結+ラジオ波の  併用療法』            

当院では原発性肺癌および転移性肺癌に対するラジオ波治療、凍結治療、凍結+ラジオ波の併用療法を積極的に行っています。当院の治療の特徴は、全身麻酔で行うので、一度に多くの病変を治療できることです。通常、一度の治療で3-4個の病変まで治療可能です。

凍結治療:当院の呼吸器外科、野守は2009年から凍結治療を行っています。治療針の中にアルゴンガスあるいは液体窒素を還流させ、腫瘍をマイナス50℃以下で凍結させて癌細胞を死滅させます。写真は凍結針を水中に入れて液体窒素で氷玉を作ったものです。
ラジオ波と比べて凍結治療は①炎症反応が少ない、②治療中の患者様の苦痛が少ないの利点があります。現在まで凍結治療を500個以上の肺癌に行い、国際医学雑誌①European J Radiology, Nomori et al., 2022年;②Clinics in Oncology, Nomori et al., 2022年;Plos One, Nomori et al., 2025年)に発表してきました。
現在、液体窒素を使用した機械に加えてアルゴンガスを使用した機械を設置しております。アルゴンガスと液体窒素の差は①液体窒素の方がアルゴンガスよりパワーが強い、②アルゴンガスは保険適応だが、液体窒素は保険適応ではなく自費診療である、の2点です。

ラジオ波治療:ラジオ波とはAMラジオで使われる周波数に近い約450キロヘルツの高周波です。腫瘍の中に直径1.5ミリの針を刺入してラジオ波電流を流し、電極周囲に熱(70-80度)を発生させることでがん細胞を死滅させます。
当院呼吸器外科の野守は2000年にラジオ波治療を開始しました(国際医学雑誌CHEST, Nomori et al., 2005年に掲載)。

凍結治療+ラジオ波治療の併用療法(130度の温度差で癌を死滅):2024年3月より凍結治療+ラジオ波治療の併用療法を行っており、2026年3月までに40病変を治療しています。併用する理由は高い温度差を生じさせることにより、腫瘍を壊死させるパワーを強くすることです。腫瘍サイズが大きい場合や腫瘍の勢いが強い場合には凍結単独あるいはラジオ波単独には抵抗性のことがあり、治療した部位から再発する“局所再発”を生じることがあります。凍結治療に引き続きラジオ波治療を加えることで、腫瘍の温度をマイナス50度以下から一気にプラス80度まで上げることができ、その急激な温度差(130度)は強いダメージを腫瘍に与えます。

それら3種類のどれを使用するかは腫瘍のサイズ、種類、位置で決定します。

尚、詳細についてお知りになりたい方は以下にアクセスしてください。
“凍結治療”の詳細をお知りになりたい方は以下にアクセスしてください。
≫凍結療法の詳細

“ラジオ波治療”の詳細をお知りになりたい方は以下にアクセスしてください。
≫ラジオ波治療の詳細


“凍結治療+ラジオ波治療の併用療法”を利用の詳細をお知りになりたい方は以下にアクセスしてください。
≫凍結治療+ラジオ波治療の併用療法

“IV期肺癌あるいは多発肺転移に対する凍結治療+免疫チェックポイント阻害剤の併用”の詳細をお知りになりたい方は以下にアクセスしてください。
≫IV期肺癌あるいは多発肺転移に対する凍結治療+免疫チェックポイント阻害剤の併用の詳細

“肺癌IV期あるいは多発肺転移に対する樹状細胞ワクチン療法と凍結治療の併用療法”の詳細をお知りになりたい方は以下にアクセスしてください。
≫肺癌IV期あるいは多発肺転移に対する樹状細胞ワクチン療法と凍結治療の併用療法の詳細

放射線治療に効かない骨転移に対するラジオ波治療および凍結治療

当院では放射線治療の効かない骨転移に対して、ラジオ波治療および凍結治療も行っています。除痛効果は70%以上と報告されています。但し、脊椎転移、骨転移から2cm以内に温度変化に弱い臓器(神経、腸など)がある場合には不可能となります。

詳細をお知りになりたい方は以下にアクセスしてください。
≫骨転移に対するラジオ波治療および凍結治療の詳細

手術および放射線治療が不可能な肺の根元の肺癌に対する “腫瘍血管塞栓術”いわゆる “兵糧攻め”治療

手術や放射線治療が不可能な「肺の根元(肺門)や胸の中央(縦隔)に存在する治療としての“血管カテーテルによる腫瘍血管塞栓術”いわゆる癌に対する“兵糧攻め”治療があります。この治療は放射線科医師との共同で行います。この治療は2020年の国際医学雑誌、European J Radiologyに当院呼吸器外科、野守医師が発表しています。

腫瘍血管塞栓術の詳細をお知りになりたい方は以下にアクセスしてください。
≫血管カテーテル治療(腫瘍血管塞栓術)の詳細

3-5cmの肺癌に対する胸腔鏡下肺葉切除術

肺は右肺が上葉、中葉、下葉に、左肺は上葉、下葉の5つの房状(肺葉)に分かれています。肺癌が5cm以下であれば、胸腔鏡を用いて5cmほどの皮膚切開で、カメラで映し出されたモニターを見ながら病巣のある肺葉と周囲のリンパ節を切除する根治術を行っています。世界中で広く行われている手術です。

3cm以下の肺癌に対する縮小手術としての区域切除

当院の特徴として、3cm以下の肺癌に対して“区域切除”という肺を小さく切除する手術を積極的に行い、肺機能を温存し術後の体力が温存できるようにしています。その際には皮膚切開の大きさは10-15cmほどの開胸で行います。皮膚切開は胸腔鏡下肺葉切除よりやや大きくなりますが、術後の痛みは胸腔鏡の手術と比べて変りません。区域切除を胸腔鏡で行う施設もありますが、肉眼で直接見るのに比べて細かい解剖を同定できないため手術が正確にならないことがあるので、当院では開胸で行っています。

(手術書、Anatomical segmentectomy, Springer, Nomori. 2025)

術後の疼痛度を1~10に分けて手術当日から術後7日目まで調べた結果を図に示します(Nomori et al., Surgery Today, 2016)。
小開胸下と胸腔鏡下の間に痛みの差は全くありません。区域切除では細い血管と気管支を見極める必要があり、そのためには正確な手術ができる開胸でおこなっています。

肺葉切除と区域切除の術後肺機能

以下のグラフは区域切除192例と肺葉切除220例の手術後の肺機能を比較したデータです(Nomori et al., J Thorac Cardiovasc Surg, 2016; Ann Thorac Surg, 2020)。
肺葉切除が術後肺機能を約87%に低下させるのに比べて、区域切除は95%ほどにしか低下しません。87%と95%の差は少ないように見えますが、肺機能が術前に比べて50%に低下すると通常の生活はできなくなりますので、87%と95%の差は大きく、実際に日常生活で大きな差があります。肺は切除後に再生しないので、失われた肺機能は戻りません。区域切除では肺機能が温存されるので、手術後の体力はほとんど低下しません。

区域切除の術後生存率

国の大規模試験により2cm以下の肺癌に対する肺葉切除と肺区域切除の術後生存率が報告され、区域切除は肺葉切除より生存率が高いことが報告されました。その理由は“区域切除では肺機能が温存されることにより、生命予後を悪化させないため”と推察されています。当院では2012年から2019年にかけて439例の3cm以下の肺癌の手術の内、図の如く62%の270例に対して区域切除を行いました(Nomori et al., Ann Thorac Surg, 2018; Interactive Cardio-Vascular Thorac Surg, 2022)。
区域切除後の無再発率(治癒率)を示します。腫瘍が1cm以下では再発例はなく、2cm以上でも80%以上の治癒率を得ており、肺葉切除と変わりありません。区域切除の方が肺葉切除より明らかに肺機能を温存できるので、区域切除は治癒率の高い低侵襲手術です。

進行肺癌に対する術前放射線化学療法後の手術療法

肺の周囲に浸潤している肺癌やリンパ節転移のある肺癌に対しては手術前に放射線療法と抗がん剤治療を行って、腫瘍を小さくし癌の勢いを弱めてから手術をした方が術後の再発が少なくなります。そのため浸潤あるいはリンパ節転移のある肺癌に対して術前に放射線と抗がん剤治療を行ってから手術を行っています。肺癌を代表する腺癌および扁平上皮癌の両方において65%以上の高い5年生存率を得ております。(Nomori et al., J Thorac Cardiovasc Surg, 2018)

小さな肺病変に対するCT透視下での針生検

最近はレントゲン写真ではわからず、CTで初めて見える小さな肺癌が増えてきました。そのような場合、「恐らく癌だから手術をしましょう」「癌かどうか判らないから様子を見ましょう」という施設もあります。しかし①癌でなかった場合には無駄な手術になる、②様子を見ることにより癌が大きくなった場合、ラジオ波治療、凍結治療、放射線治療の低侵襲治療の選択肢が無くなる、③癌であった場合に様子を見ると癌が進行するという欠点があります。当院では針生検(病変の一部を針で採取)をしており、サイズが4mmあればほぼ100%の確率で診断できます。写真は5mmの病変に対して針生検を行い、腺癌と診断された症例です。

小さな肺腫瘍に対する造影剤によるマーキング後の切除術

小さな肺癌は手術中に目で見ても触っても判らないことが多くあります。それに対して術前に造影剤によるマークを行うことにより、どんな小さな肺癌でもその位置を手術中に見極め正確な切除が可能となります。
図は微小肺癌ですが、それに対して造影剤をCT室で病変に注入しマークします。このように造影剤でマークすると、手術中にその病変が正確に判り、正確に切除ができます。

気管支の中枢にできた肺癌に対する気管・気管支形成術

気管や太い気管支に浸潤している癌は通常だと手術不能、あるいは肺全摘を必要とすることがありますが、当院では気管・気管支の癌の浸潤部位のみを切除して肺全摘を避けています。肺全摘をすると生命予後が短縮します。
写真は右上葉の根元に生じた肺癌で、手術を先行すると肺全摘が必要になります。これに対して抗がん剤+放射線治療後に右上葉+気管分岐部の切除を行いました。気管分岐部の切除は肺の手術の中で最も難易度の高い手術の一つですが、術後5年間、再発なく社会復帰しております。

呼吸器外科部長、野守裕明の履歴

1979年3月 慶應義塾大学医学部 卒業
1979年4月 慶應義塾大学病院 外科研修医
1980年5月 国家公務員共済組合連合会立川病院 外科
1981年6月 国立埼玉病院 外科
1982年7月 国立がんセンター 外科レジデント
1985年6月 慶應義塾大学医学部 呼吸器外科
1988年5月 東京都済生会中央病院 呼吸器外科
2005年4月 熊本大学医学薬学研究部 呼吸器外科教授
2009年4月 慶應義塾大学医学部 呼吸器外科教授
2012年8月 亀田総合病院 呼吸器外科顧問
2019年5月 柏厚生総合病院 呼吸器外科部長

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