呼吸器外科

肺癌に対する“切らない”で治す低侵襲治療『局所麻酔下の凍結治療』

柏厚生総合病院の呼吸器外科では肺がんに対する凍結治療を積極的に行っています。
肺癌に対する凍結治療の第一例目は2002年に慶應大学病院で行われました。当院の呼吸器外科、野守は2009年より慶應大学病院、亀田総合病院、柏厚生総合病院に渡って、それぞれの施設における責任者として、現在まで肺癌に対する凍結治療500例以上に携わってきました。当初は自費診療として100万円以上かかった治療ですが、経験の蓄積により治療手技が安定してきたので、現在当院では、“自費診療として55万円(凍結針1本、入院費、消費税込み)”でできるようになりました。(但し、準個室は5,000円/日、個室は19,000円/日、別途かかります)
最近はCTの普及により超早期肺癌と言われる小さな肺癌や、他臓器癌からの小さな肺転移が見つかるようになりました。その場合でも標準治療は手術ですが、手術以外の低侵襲治療もあります。手術以外の治療で代表的なものは放射線治療(定位照射あるいはピンポイント照射)ですが、凍結治療もあります。手術と比べた凍結治療の利点は痛みを含めた侵襲が圧倒的に少ないこと、また放射線照射と比べた凍結治療の利点は“肺機能が低下しない”ことです。
凍結治療はCT室で腫瘍に針を刺して、針の中に液体窒素(マイナス170度)を循環させ、腫瘍を凍結して壊死させる治療です。

2020年10月、当院で行っている原発性肺癌に対する凍結治療の成績が国際医学雑誌「European Journal of Radiology」に掲載されました。

国際発表では2019年9月の第20回国際凍結治療学会で発表しました。

凍結治療の詳細をお知りになりたい方は以下にアクセスしてください。
≫凍結療法の詳細

抗がん剤治療が無効の進行肺癌に対するアブスコパル効果(凍結免疫効果)を狙った『凍結治療+免疫チェックポイント阻害剤の併用』

凍結治療には “アブスコパル効果”という免疫効果があることが以前より知られています。その機序は“凍結で死滅した腫瘍がワクチンとして作用する”からです。腫瘍は凍結直後に死滅し、それまで細胞膜で保護されていた腫瘍抗原が一気に腫瘍の外に放出されます。そこに体の免疫細胞が集まり癌抗原を認識します。

一方、免疫チェックポイント阻害剤という免疫療法薬が肺癌に使用されており、それを投与すると “癌のバリア”が解除され、さらに免疫細胞が癌を攻撃しやすくなります。そこで当院では、抗がん剤治療が無効の進行肺癌に“凍結治療+免疫チェックポイント阻害剤の併用”を臨床研究として行っています。
一方、免疫チェックポイント阻害剤という免疫療法薬が肺癌に使用されており、それを投与すると “癌のバリア”が解除され、さらに免疫細胞が癌を攻撃しやすくなります。そこで当院では、抗がん剤治療が無効の進行肺癌に“凍結治療+免疫チェックポイント阻害剤の併用”を臨床研究として行っています。

「凍結治療+免疫チェックポイント阻害剤の併用」の詳細をお知りになりたい方は以下にアクセスしてください。
≫凍結治療+免疫チェックポイント阻害剤の併用

骨転移に対する凍結治療

当院では骨転移に対する凍結治療も行っています。但し、脊椎転移に対する凍結治療は脊髄マヒの危険性があるために行っていません。

「骨転移に対する凍結治療」の詳細をお知りになりたい方は以下にアクセスしてください。
骨転移に対する凍結治療

凍結治療にかかる費用

保険適応ではないので、自費診療となります。
費用は治療費+入院費+消費税込みで55万円です。
但し腫瘍が大きい、あるいは腫瘍が2箇所ある場合には、針を2本使用します。針1本が15万円ですので、その際には55+15=70万円となります。

治療をご希望される方、あるいは治療のご質問をされたい方は、当院呼吸器外科の野守裕明の外来(月曜日と木曜日)を受診してください。

手術および放射線治療が不可能な肺の根元に存在する肺癌に対する “カテーテル治療(腫瘍血管塞栓術)”、いわゆる “兵糧攻め”治療

手術や放射線治療が不可能な「肺の根元(肺門)や胸の中央(縦隔)に存在する治療としての“血管カテーテルによる腫瘍血管塞栓術”いわゆる癌に対する“兵糧攻め”治療があります。この治療は放射線科医師との共同で行います。

腫瘍血管塞栓術の詳細をお知りになりたい方は以下にアクセスしてください。
≫血管カテーテル治療(腫瘍血管塞栓術)の詳細

3-5cmの肺癌に対する低侵襲治療、胸腔鏡下肺葉切除術

肺は右肺が上葉、中葉、下葉に、左肺は上葉、下葉の5つの房状(肺葉)に分かれています。肺癌が5cm以下であれば、胸腔鏡を用いて5cmほどの皮膚切開で、カメラで映し出されたモニターを見ながら病巣のある肺葉と周囲のリンパ節を切除する根治術を行っています。現在では全国で広く行われている治療です。

3cm以下の肺癌に対する小開胸による区域切除による低侵襲治療

当院における外科治療の特徴として、3cm以下の肺癌に対して区域切除という肺を小さく切除する手術を行い、肺機能を温存し術後の体力が温存できるようにしています。その際には皮膚切開の大きさは8-10cmほどで胸腔鏡下肺葉切除よりやや大きくなりますが、術後の痛みは胸腔鏡の手術と比べて全く変りません。

術後の疼痛度を1~10に分けて手術当日から術後7日目までの結果を図に示します。このデータは当院の野守が2016年に国際雑誌[Surgery Today]に論文発表したものです。小開胸下での肺区域切除と胸腔鏡下の肺葉切除の痛みは全く差がありません。

肺葉切除と区域切除の術後肺機能

以下のグラフは当院の野守が、区域切除192例と肺葉切除220例の手術後の肺機能を比較したデータですが、肺葉切除が術後肺機能を約87%に低下させるのに比べて、区域切除は95%ほどにしか低下しません。87%と95%の差は一見少ないように見えますが、肺機能が術前に比べて50%に低下すると通常の生活はできなくなりますので、87%と95%の差は大きいです。肺は切除後に再生しないので、一度失われた肺機能は戻りません。区域切除では多くの肺機能が温存されるので、手術後の体力がほとんど低下しません。

区域切除の術後生存率

2012年から2019年にかけて、439例のI期肺癌(早期肺がん)に対して手術を行いましたが、図の如く62%の270例に対して区域切除を行いました。62%という区域切除の比率は全国的に比べると高い数値であり、積極的に区域切除を行っています。
図に区域切除後の無再発率を示します腫瘍が1cm以下では再発例はなく、2cm以上でも概ね80%以上の治癒率を得ており、肺葉切除と変わりありません。区域切除の方が肺機能を温存できるので、小開胸による区域切除は胸腔鏡下による肺葉切除に比べて低侵襲と言えます。

なお当院の野守裕明は区域切除の教科書および手術ビデオを国内、国外に出版しています。

進行肺癌に対する術前放射線化学療法後の手術療法

肺の周囲に浸潤している肺癌やリンパ節転移のある肺癌に対しては手術前に放射線療法と抗がん剤治療を行って、腫瘍を小さくし癌の勢いを弱めてから手術をした方が術後の再発が少なくなります。図のデータは当院の野守の経験です。局所に浸潤あるいはリンパ節転移のある肺癌97例に対して術前に放射線治療と抗がん剤治療を行ってから手術を行いました。肺癌を代表する腺癌および扁平上皮癌の両方において65%の5年生存率を得ております。

 

小さな肺病変に対するCT透視下での針生検

最近はレントゲン写真ではわからず、CTで初めて見えてくる小さな肺癌が増えてきました。そのような場合、「恐らく癌だから手術をしましょう」「癌かどうか判らないから様子を見ましょう」などという意見もあります。しかし“癌でなかった場合には無駄な手術になる”、“凍結治療や放射線治療の治療選択肢が無くなる”“癌であった場合に様子を見ると癌が進行する”という欠点があります。当院ではCT室にて針生検(病変の一部を針で採取)をします。5mmほどの病変でも確定診断ができます。

小さな肺腫瘍に対する造影剤によるマーキング後の切除術

小さな肺癌は手術中に目で見ても触っても判らないことが多くあります。それに対して術前に造影剤によるマークを行うことにより、どんな小さな肺癌でもその位置を手術中に見極め正確な切除が可能となります。
図は微小肺癌ですが、それに対して造影剤をCT室で病変に注入しマークします。このように造影剤でマークすると、手術中にその病変が正確に判り、正確に切除ができます。

気管支の中枢にできた肺癌に対する気管・気管支形成術

気管や太い気管支に浸潤している癌は通常ですと手術不能、あるいは肺全摘を必要とすることがありますが、当院では気管・気管支の癌の浸潤部位のみを切除して肺を温存することを積極的に行っています。
写真は右上葉の根元に生じた肺癌で、手術を先行すると肺全摘が必要になります。これに対して抗がん剤+放射線治療後に右上葉+気管分岐部の切除を行いました。術後4年間、再発なく社会復帰しております。

 

 

文責:呼吸器外科 野守裕明

呼吸器外科部長、野守裕明の履歴

1979年3月 慶應義塾大学医学部 卒業
1979年4月 慶應義塾大学病院 外科研修医
1980年5月 国家公務員共済組合連合会立川病院 外科
1981年6月 国立埼玉病院 外科
1982年7月 国立がんセンター 外科レジデント
1985年6月 慶應義塾大学医学部 呼吸器外科
1988年5月 東京都済生会中央病院 呼吸器外科
2005年4月 熊本大学医学薬学研究部 呼吸器外科教授
2009年4月 慶應義塾大学医学部 呼吸器外科教授
2012年8月 亀田総合病院 呼吸器外科顧問
2019年5月 柏厚生総合病院 呼吸器外科部長

 診療科一覧へ戻る

診療科の紹介