診療方針
柏厚生総合病院の泌尿器科は2011年1月より現在の常勤医が赴任して以来段階的に増員され、現在は常勤医3名、非常勤医2名で運営しています。外来の待ち時間が短縮され、前立腺癌に対するロボット支援手術や前立腺肥大症へのレーザー核出術、尿管結石砕石術、腹腔鏡下腎手術など可能な手術も広がり、当科はほぼ全ての泌尿器疾患に対応できる科となっております。今後も地域の方々のニーズに応えられるよう誠意を持って診療を行って参ります。
ご自身の排尿状態が悪いと自覚されていたり、前立腺などの泌尿器腫瘍の心配、性機能のお悩みがある方はお気軽にご相談下さい。
泌尿器科と言えば性病のイメージのあるかもしれませんが、実際は非常に広い範囲の疾患をカバーしており、その内科的治療のみならず外科治療も行います。
以下泌尿器科で扱う臓器の図です。
当科では上記疾患を幅広く診療可能です。
慢性腎機能障害(蛋白尿など)や透析治療、腎移植は当科では扱っておりません。恐縮ですが腎臓内科、または腎移植を扱う泌尿器科を受診してください。
男性不妊症については精液検査は可能ですが、治療は取り扱っておりません。
特に常勤医はがん専門病院や地域基幹病院での経験により泌尿器がんの診断と外科治療、化学療法については得意分野としております。
前立腺肥大症に対する内視鏡的レーザー核出術(HoLEP)も行なっております(こちらを参照)。
尿路感染症や尿路結石についても入院治療が必要な場合、対応が可能です。尿路結石もレーザー導入で尿管内視鏡での砕石治療が可能となりました。
初診の方は尿検査を行う事が多いため、可能であれば尿が溜まった状態で泌尿器科窓口までお越し下さると待ち時間は少なくなります。診察前に尿を検査し結果とともに診察を行います。
できる限り待ち時間が少なく診察する様に努力致しますが、当日の予約状況や、患者様の状態によっても待ち時間は変化してしまいます。多少待ち時間が長くなる事も御座いますが、何卒ご理解くださいますようお願いいたします。
医療の原則は信頼関係と考えております。 患者様がご理解いただけるまで充分な情報を提供し、納得して治療を受けていただけるよう努力します。不明な点や解らない点については遠慮せずに御質問ください。
手術件数
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2019 |
2020 |
2021 |
2022 |
2023 |
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総数 |
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272 |
383 |
478 |
418 |
膀胱癌
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膀胱全摘術 回腸導管造設
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2
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2
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0
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1
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0
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ロボット支援膀胱全摘術 回腸導管造設
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7 |
4 |
経尿道的膀胱腫瘍切除
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31
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38
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32
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62
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46
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腎盂尿管癌
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腹腔鏡下腎尿管全摘 |
2
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2 |
2 |
2 |
6 |
前立腺癌
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根治的前立腺全摘除術(開腹)
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3
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0 |
0 |
0 |
0 |
ロボット支援前立腺全摘除術
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18 |
31 |
53 |
59 |
47 |
前立腺針生検
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95
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132 |
184 |
213 |
153 |
前立腺肥大症
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経尿道的前立腺切除(TUR-P)
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2
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0 |
2 |
10 |
9 |
経尿道的前立腺レーザー核出術(HoLEP)
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10 |
16 |
36 |
34 |
40 |
腎細胞癌
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根治的腎摘除術
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2
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0 |
1 |
0 |
1 |
腹腔鏡下根治的腎摘除
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1 |
5 |
1 |
1 |
5 |
ロボット支援腹腔鏡下根治的腎摘除
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1 |
0 |
腎部分切除
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7
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1 |
4 |
1 |
0 |
ロボット支援腎部分切除
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6 |
11 |
精巣腫瘍
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高位精巣摘除
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2
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4 |
3 |
1 |
2 |
前立腺癌の診断・治療法 当科の手術の特色
前立腺癌は他のがんと比べて進行がかなりゆっくりですので、担当医から十分説明を受けて熟慮して納得してから治療を開始しても遅くはありません。
1 前立腺針生検
PSAが高値の場合、実際に癌があるかどうか前立腺に針を刺して組織を採る針生検を行う必要があります。
各病院で様々な方法で行っておりますが、当科では1泊2日の入院で、仙骨硬膜外麻酔下に経直腸的に行っています。これは直腸にエコーを挿入して直腸の壁越しに針を刺して組織を採る方法です(下図)。通常12カ所以上生検します。
持続する血尿、高度な血便、感染症(前立腺炎)、尿閉など合併症もまれに起こる事があります。
2 当科における前立腺癌の治療方針
リンパ節転移や他臓器転移のある場合はホルモン療法を継続的に行います。
転移のない限局性前立腺癌の治療に対して、国際的に使用されている前立腺癌のリスク分類によって治療法を選択いたします。
リスク分類とはPSA 、グリソンスコア、臨床病期から、低リスク 中間リスク 高リスクに分類します。
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治療法
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低リスク
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PSA<10 かつ
グリソンスコア≦6かつ
小さな限局がん(T1−T2a・T2b)
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無治療経過観察
手術(前立腺全摘術)
放射線内照射(I-125小線源治療)
放射線外照射(IMRT/3DCRT)
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中間リスク
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PSA10-20または
グリソンスコア 7または
広がりのあるがん(T2c)
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手術(前立腺全摘術)
放射線内照射(I-125小線源治療)
放射線外照射(IMRT/3DCRT)+短期ホルモン療法(放射線治療前約6ヶ月)
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高リスク
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PSA20以上または
グリソンスコア 8−10または
前立腺外に出たがん(T3-T4)
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手術(前立腺全摘術)
放射線外照射(IMRT/3DCRT)+長期ホルモン療法(放射線治療前後2年)
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一般的に手術療法と放射線療法は治療成績自体には大きな差はなく、それぞれ長所と短所があります。治療法の選択は非常に悩むことが多いですが、当科では充分時間をとって治療法について説明と相談をしています。納得した方法で治療を行っていただくためにできる限りの情報を提供するよう心がけております。
当院には放射線治療設備が未整備なため、放射線外照射または小線源治療をご希望の場合、国立がん研究センター東病院や大学病院にご紹介させていただいております。その場合も治療前後のホルモン療法やPSAフォローアップは当院で行います。
当科ではこれまで従来の開腹手術を行って参りました。前立腺に極力周囲組織をつけて切除し、根治性を向上させるよう努力してきました。
当科における局所限局癌(T2以下)の断端陽性率は4.7%とかなり低く、根治性は大学病院やセンター病院に引けは取らないと自負しております。
しかし一般的に高リスク群では手術療法では採りきれない場合もあり、手術療法は推奨されない場合もあります。もちろん限界はありますが当科では高リスク例でも積極的に拡大術式で手術を行っており良好な治療成績を得ています。
当科での手術症例の5年非再発率は88.1%でした。
前立腺全摘では尿失禁が問題になります。個人差があり回復に数ヶ月を要することもありますが、以前の術式より失禁量はだいぶ減少しております。当科の術後1年半での尿禁制(漏れがない状態)率は86.8%です。
手術支援ロボットdaVinci®による前立腺全摘術
2019年4月に当院に手術支援ロボットdaVinci®が導入されました。(詳しくはこちら)当科では前立腺癌に対する前立腺全摘術から開始しております。ロボット支援手術は、腹腔鏡手術の鉗子が多関節になっており、それを遠隔操作で行う手術です。前立腺全摘術は視野の確保と出血コントロールが非常に難しい手術ですが、ロボット支援手術ではそこにメリットがあります。しかしdaVinciが全てを解決してくれるわけではなく、手術の良し悪しは術者の裁量で決まります。機械に頼るだけではなく、開腹術で培った技術を応用し、より低侵襲で根治性の高い手術を実践して参ります。
≫手術支援ロボット〈da Vinci〉サージカルシステムについて
≫手術支援ロボットdaVinci®による前立腺全摘術
≫手術支援ロボットdaVinci®による膀胱全摘術
≫手術支援ロボットdaVinci®による腎部分切除術
≫手術支援ロボットdaVinci®による仙骨膣固定術
≫前立腺肥大症に対する内視鏡的前立腺ホルミウムレーザー核出術(HoLEP)
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