凍結治療の詳細

肺癌を“切らない”で治す低侵襲治療“凍結治療の詳細”

CT室で全身麻酔後、凍結針を写真のように腫瘍に刺して凍結融解を繰り返します。
写真は凍結治療中、治療後のCT写真です。肺の部位に凍結用の針が刺入され、がんの周囲を凍結させます。治療後、凍結した部位は6ヶ月ほどの間で徐々に縮小し瘢痕状になります。

凍結治療に用いられる針は、その周囲約4cmの範囲で癌とその周囲の正常組織を凍らせます。写真は水の中に凍結針を入れて凍結させた写真ですが、体の中でもこのように組織が凍結されます。

肺癌に対する凍結治療は当初は局所麻酔で行っていましたが、2020年10月より全身麻酔で行うようにしました。理由は凍結治療には約1-2時間かかり、その間、患者様はCT台の上で “動かない姿勢を保つ”という精神的な負担を強いられます。それを軽減するために局所麻酔から全身麻酔に切り替えました。全身麻酔にしたもう一つの理由は針を刺入する間に呼吸を安全に止めることができ、局所麻酔中の自発呼吸より針を正確に腫瘍にさせることです。軽い全身麻酔なので、治療が終わった直後より意識は清明で歩くことも不自由なくできます。傷は針の孔だけなので痛みはほとんど無く、通常治療後3-4日目には退院でき、退院後翌日からは通常の社会生活に復帰できます。そのため手術が困難であるといわれる高齢者あるいは体力に余裕のない患者様、また手術を希望されない患者様にはこの凍結治療を行っています。

凍結治療が適応となり得る腫瘍を以下に列挙します。
1 .腫瘍のサイズが原則として3cm以下の原発性肺癌あるいは転移性肺癌。
2 .病変の数が原則として3個以内。
3 .但し、病変が3個以上の多数の転移性肺癌でもその内の1-2個が大きく、大きな転移巣により余命が短くなる可能性がある場合には余命延長目的で凍結治療の適応となります。
4 .放射線治療後の肺病変の再発。
5 .手術療法が本人にとって危険性が高い。
6 .手術療法が危険でなくても、本人が手術療法あるいは放射線療法より凍結治療を強く希望する。

原発性肺癌に対する凍結単独治療の現在までの成績

2020年10月に国際医学雑誌、European Journal of Radiologyに原発性肺癌に対する凍結単独治療の成績を当院の野守が発表しましたので、その成績を紹介します。局所制御率(凍結部位から再発しない確率)を腫瘍のサイズ毎にグラフに示します。“1.2cm以下では局所制御は100%”, “1.3 – 1.7cmでは96%”と良好ですが、“1.8cm以上では55%”と低下します。

 

“1.8cmより大きな肺癌”に対する治療成績を上げるために行い始めたのが “放射線治療後+凍結治療”の併用療法

そこで当院では1.8cm以上の肺癌に対しては”放射線治療+凍結治療“の併用を行っています。ピンポイント放射線照射を4-5回行った後、1ヶ月以内に凍結治療を追加する方法です。以下の写真は脳転移があった肺癌患者様ですが、脳転移はガンマナイフで治療し、原発巣に対してピンポイント放射線治療+凍結治療を行いました。2年6か月後の現在、脳転移を含めて原発巣の再発もありません。

現在まで65人の患者様にピンポイント放射線照射+凍結治療を行ってきました。60人に再発がなく5年間の局所制御率は90%です。1.8cm以上の肺癌に対する凍結単独治療の局所制御率が55%なので、放射線治療を加えることにより局所制御率は高くなります。

一方、放射線治療単独では2cm以下の肺癌と2cm以上の肺癌に対する5年生存率はそれぞれ90%と50%と報告されています。そのため2cm前後より大きな肺がんに対してはピンポイント放射線治療+凍結治療の併用療法は放射線治療単独より効果が高いと思われます。
肺にピンポイント放射線治療すると放射線性肺炎という肺炎が5%生じると言われています。ピンポイント放射線治療+凍結治療で肺炎を生じて治療を要した患者様は65人中3人(5%)ですので、凍結治療を加えることにより放射線性肺炎を増悪させることはありません。

転移性肺癌に対する凍結治療

121個の転移性肺癌に対して凍結治療を行ってきました。その局所制御率(凍結したところから再発していない確率)を図に示します。

2.2cm以下の転移性肺癌では3年間の局所制御率が95%ですが、2.2cm以上では50%に低下します。2.2cm以下の転移性肺癌に対して凍結治療は有効です。2.2cm以上の転移性肺癌に対して現在は凍結針を2本用いて凍結範囲を広くすることにより局所制御率を上げるようにしています。

切除不能あるいは放射線治療抵抗性の胸腔内腫瘍に対する手術中の凍結治療

切除不能あるいは放射線治療抵抗性の胸腔内腫瘍においても手術中に凍結治療を行うことが可能です。
以下の症例は心臓に生じた肉腫であり、手術で行い人工心肺を用いて心臓の動きを止めて、腫瘍に凍結用の針を刺し凍結治療を行いました

患者様のCT写真と手術中の写真です。患者様は翌日には歩くことができ、1週間後に退院しました。腫瘍も治療後縮小しました。

凍結治療と他の治療との比較

1 手術療法との比較
凍結治療の利点
手術療法はすべての治療法の中で最も治療成績の良い治療です。しかし手術では胸腔鏡のように小さな傷で行っても痛みを伴い、肺機能も低下します。凍結治療は針1本を胸壁から刺入して行う治療なので、手術より治療後の痛み、肺機能低下は少なくなります。

凍結治療の欠点
 1 .自費診療

2 .手術治療の局所再発率が約5%以内であるに対して、凍結治療では腫瘍が大きくなると局所再発率が高くなります。

2 放射線療法との比較
凍結治療の利点
凍結治療が放射線治療より優れた点は

1.放射線治療は肺機能の低下を生じますが、凍結治療は肺機能の低下を生じません。
2.放射線治療は間質性肺炎を伴っている肺癌には不可能ですが、凍結治療は間質性肺炎を伴っていても可能です。
3.放射線治療後に局所再発をすると、再度の放射線治療はできませんが、凍結治療は何回も行うことができます。
4.放射線照射は複数病変の治療は困難ですが、凍結治療は複数病変でも可能です。
5.放射線照射に感受性の低い癌(特に転移性肺癌)でも凍結治療は治癒させる可能性が高いです。
凍結治療の欠点
 1 .放射線治療が保険適応ですが、凍結治療は自費診療です。

2.“針を刺す”ことにより、気胸(針孔から空気が漏れて肺が一時的に縮む)の生じることが約30%(当院データ)にあることです。なお気胸を生じた際には胸に管を入れて治しますが、多くの場合1-2日間で気胸は治り管は抜かれて退院できます。

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