ロボット支援腎部分切除を受けるにあたって知っておいてもらいたいこと

腎癌と診断された患者様の中にはロボット支援腎部分切除を治療として提案されることが多いと思います。ご本人様は悩むでしょうし、時には治療に関してご家族様に相談されることもあると思います。

ロボットだけではなく、開腹手術、腹腔鏡手術でも施行は可能ですが、すべての手術を経験してみると私はロボット手術に分があるように感じていますし、世界中の多くのデータもそれを示唆しています。

ここで患者様にとって重要なことは、近隣の医療施設の中でもぜひ手術成績が公表できるような施設で治療を受けていただきたい、ということです。

症例数は公表できても、手術成績が公表できない病院にはそれなりの理由があります。
自己の手術成績を顧みていない場合や、手術成績が悪くて公表できないなんてこともあるかもしれません。もしくは病院の方針としても、担当医は聞かれたらしっかりと答えられなければなりません。

当院では2022年9月からロボット支援腎部分切除を開始いたしましたが、これまでの手術成績を公表いたします。これを一つ、当院で治療を受けられるかの判断材料としていただければと思っております。

腎部分切除で大事なのは、断端陰性率(癌を正常な組織に包んで切除できているか、すなわち癌が取り切れたと想定される確率)、腎機能がどの程度温存されたか合併症がない(輸血を要するような出血、尿瘻等)の3つとされています。

当院のこれまでの手術成績は2025年8月時点で分析可能な35症例で下記の通りでした。
断端陰性率96.9%  癌に関しては100%
術後6カ月時点での腎機能の平均低下率(eGFR)4.5%
術中術後合併症輸血0例、術後再出血0例、尿瘻0例(ドレーン留置延長例なし) 仮性動脈瘤0例
術後10日以内での退院率100%

まだ当院での施行は35例ほど(2025/8月時点)ではありますが、多くの報告よりも同等か優れている手術成績であったことに安心しています。
腎部分切除は場所によっても難度が変わります(例えば腎臓内に完全に埋もれている場合は難度がやや高い) ただそうした難度の高い手術であろうと、切除に向けた視野展開、処理する血管、切除方法、想定切除ライン、止血方法、起きうるトラブルへの対応などを手術前に繰り返し頭の中でシミュレーションすることで手術成績を向上させられると確信し、それをこれまで続けてきました。

これまでは原則として1人の医師に執刀医を固定してきました。これからは執刀医を徐々に増やしていきますが、術前のシミュレーションを十分に行うことが手術成功への鍵であると考えており、引き続き科内で手術前のシミュレーションを行うことを継続し、良好な治療結果を患者様に提供できるよう尽力いたします。

 手術に対する姿勢というものは、必ず手術成績に差となって表れてきます。
患者様におかれましては、近隣の医療施設の中でもぜひ手術成績を公表できるような施設で治療を受けていただきたいと思っています。

腎癌と診断され、治療を検討されている方への参考になれば幸いです。

文責 泌尿器科 小川

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