乳腺外科

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乳腺外科

乳腺外来受診者数が増加しているため、独立した科としての専門診療提供が必要であるとの観点から乳腺外科が2015年春に設置されました。

精度の高い検診、精査を提供し、最新のガイドラインに準じた乳がん診療はもとより、広範囲の周辺疾患に対応いたします。乳房形成などの整容における選択肢が広がっており、形成外科との協働で実施いたします。

乳がん診療の概況

先進国を中心に「安心出来るがん医療」を目的として、診療の最適化、 均てん化のためのガイドラインが作成されており、診療に当たる専門医、認定医は、このガイドラインに沿った診療を行います。 当科では、米国NCCN、ヨーロッパSt.Gallen、日本乳癌学会のガイドラインに準じた診療を行っております。
現在の手術待ちは、2〜4週間、入院期間は数日程度です。

昨年度実績

昨年(2022/1〜12/31)は、新規乳癌診断件数  167件、総手術数 130件、乳癌手術件数  123件であり、新型コロナ以降も毎年1〜2割の増加を認めました。当院は検診後の精査受診が多いことが特徴ですが、新型コロナ蔓延初期(2〜7月)に一時的に受検者数が減少したものの、その後例年より多くの乳癌検診数が続いております。地域の基幹施設になっている当院で見る限り、懸念されていた検診手控えは一時的なものと見受けられます。昨年の検診発見乳癌手術症例をまとめると、非浸潤がんでの発見は30%近く、浸潤癌のみの集計では、浸潤径の中間値は1.1cmであり、1cm以下の腫瘍が60%を超え、1.5cm以下の割合は約90%でした。これらの数字はカナダやEUの諸外国で設定されている目標値を大きく上回っておりますので(表1)、当院での早期診断の精度を期待していただける情報としてお示し致します。また、不必要な生検も精度管理上慎むべきこととされていますが、当院では生検症例中にがんが占める割合は、約8割であり侵襲のある生検も限定した症例に行われていることをご報告いたします。これらの精度はこの数年継続して維持されております。

表1 (当院における検診発見乳癌症例のまとめ;2020年)

検診・精査の管理項目 精度管理上の目標値 当院での値
全乳癌中の非浸潤癌の割合 10~20%(EU評価水準) 27%
浸潤径1cm以下の割合 25~30%以上(EU評価水準) 61%
浸潤径1.5cm以下の割合 50%以上(EU&Canada評価水準) 90%
StageⅡ以上の乳癌の割合 30%未満(EU評価水準) 4%
リンパ節転移陰性症例の割合 70%以上(EU&Canada評価基準) 99%

 

治療における動向;有症状で発見された乳癌(検診発見ではない)の場合は、平均した浸潤径は検診発見と比して倍以上となり、腋窩リンパ節転移率も数倍に及ぶことから、検診喚起は継続して必要であると思われます。有症状および検診発見すべての乳癌の治療動向を見ると、昨年の当院での温存術施行率は約43%、腋窩リンパ節郭清を省略できたものは87%とほぼ安定した割合に落ち着いています。一昨年にインプラントによる有害事象の注意喚起が世界的に報道された影響のためかインプラントによる再建希望者は激減していますが、今後も中長期の安全性情報が再建実施率に影響を与えるであろうと考えられます。

近年薬物療法の進歩はこれまでにも増してめざましいものがあります。 乳癌分野における新規に承認された薬剤は、近年precision medicineの提唱とともに注目されておりますが、当院ではこれらの注目すべき薬剤をいち早く採用し実臨床に使用しております。今後上市される新規機序の薬剤においても、またガイドラインの変更においてもタイムラグなくアップデートし、常に最新の治療を行っております。

診断に使われる画像検査

マンモグラフィ

精度の高い撮影をするために、乳房を引き伸ばしてなるべく平らに圧迫し、乳腺の重なりをできるだけ少なくして、左右の乳房を乳腺専用のレントゲン装置で撮影します。 このため個人差はありますが圧迫する際の痛みが伴うことがあります。マンモグラフィーには写らない乳がんもあることが知られており、 また乳腺濃度の高い方の場合には、乳腺の中に隠れたしこりが見えにくいという弱点があり、超音波検査などを併用することをお勧めする場合があります。

超音波検査

乳房の表面にゼリーをぬって、乳腺専用の超音波装置を乳房にあてて行う痛みのない検査で、放射線の被曝はありません。 また乳腺の発達した若年層の方や妊娠中の方の検査に適しています。

MRI

3Tの高性能MRI装置やマルチスライスCTスキャナーを使用してより詳細な評価、診断に役立てています。 デジタルマンモグラフィー撮影機も増設しする予定です。

 

精査に使われるその他の検査

良悪性を確認する必要がある病変に対しては、最終的に細胞や組織を採取して顕微鏡での検査を行うことは一般的です。 以下の検査が一般的で、1⇒3になるほど採取する検体の量が多くなり、精度も高くなりますが、穿刺する針が太くなり、費用も高くなります。担当医が、個々に適した検査を選択します。

1.細胞診
注射針を病変部に刺し吸引で採取された細胞を顕微鏡で見る。

2.針生検

3.吸引針組織生検

 

乳房形成について

乳癌の治療として乳房を全摘した後の乳房形成術には、いくつかの選択肢があります。 人工物(シリコンバッグ)による再建もすでに保険診療で行えるようになっていますので、今では一般的な選択肢となりました。 興味のある方は是非主治医にご相談ください。

① 乳癌手術で乳房を全摘する際に、同時に生食バッグを大胸筋下に挿入します。 シリコンバッグに入れ替える時のために周囲組織に余裕を持たせることを目的として、数ヶ月かけて外来で生食を注入し徐々に大きくします。 十分なスペースがえられた後、シリコンバッグに入れ替える手術を行います。

上記①が最も一般的に行われていますが、この他にも同時再建、異時再建などいくつかの選択肢があります。 過去に全摘手術を受けた方も、再建が可能ですのでご相談ください。

左(向かって右)は乳頭温存皮下乳腺切除後にインプラントでの同時再建を行いました。
右も以前乳房温存術を受けています(他院)。


医師

部長 正村滋

学歴

慶應義塾大学 S59卒

所属学会

日本外科学会    日本乳癌学会
日本癌学会     日本乳癌検診学会
日本癌治療学会

認定等

日本外科学会専門医
日本乳癌学会専門医
JABTAS乳房超音波資格認定医
臨床研修指導医

診療部長 苅込和裕

学歴

山梨医科大学 S62卒

所属学会

日本外科学会      日本乳癌学会
日本消化器外科学会   日本腹部救急医学会
日本臨床外科学会

認定等

日本外科学会専門医
日本消化器外科学会認定医
日本乳癌学会乳腺認定医
検診マンモグラフィー読影認定医
身体障害者福祉法指定医(膀胱又は直腸機能障害)
身体障害者福祉法指定医(小腸機能障害)
臨床研修指導医
回復期リハ病棟専従医師研修会修了

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