骨粗鬆症について

骨粗鬆症とは

WHO(世界保健機関)は骨粗鬆症を低骨量と骨組織の微細構造の異常を特徴とし、骨の脆弱性が増大し、骨折の危険性が増大する疾患」と定義しています。

現在、骨粗鬆症の患者数は約1300万人と推測されています。しかし実際に治療を受けているのは約20%程度といわれ、疾患や治療に対する理解が未だ不十分です。

-歴史-
1996年、我が国において作成された骨粗鬆症の診断基準では、脆弱性骨折があるかないかの2つのカテゴリーに分け、脆弱性骨折がある例では骨密度が若年成人平均値(young adult mean:YAM)の80%未満、脆弱性骨折がない例では、YAMの70%未満を骨粗鬆症と診断していました。その後、骨強度に影響する因子として骨密度以外の様々な因子が明らかになりました。こうした流れを受けて、2000年、米国立衛生研究所のコンセンサス会議において「骨質」の概念が導入され、骨粗鬆症は「骨強度(骨密度70%+骨質30%)の低下を特徴とし、骨折のリスクが増大しやすくなる骨格疾患」と定義されています。
※ 骨質:骨微細構造や骨代謝、微小骨折、骨石灰化など

 

骨粗鬆症の病態

○ 骨の代謝
成長期において、骨はカルシウムを蓄積し、20歳までに最大骨量に達するとされています。その後、骨量は比較的安定に推移しますが、女性の場合には「閉経」を境に骨量が減少していきます。
また、人間の骨は絶えず、「骨リモデリング」と呼ばれる新陳代謝を繰り返してします。閉経、加齢、運動不足など、様々な要因によって「骨形成」と「骨吸収」のバランスが崩れ、「骨吸収」が優位な状態が持続することが、骨粗鬆症の一因とされています。
※ 骨リモデリング:既存の骨は破骨細胞によって吸収され(骨吸収)、骨芽細胞によって新しい骨が作られる(骨形成)

○ 骨粗鬆症を引き起こす危険因子
ホルモンのアンバランス:閉経や加齢、病気などによって女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が低下すると、「骨吸収」が「骨形成」を上回り、骨量が減少します。高齢女性に骨粗鬆症が多くみられるのは、閉経後にエストロゲンの分泌が急減することに起因しています。他に副甲状腺ホルモンも骨代謝に重要な役割を果たしており、このホルモン過多によって骨粗鬆症を引き起こす場合もあります。
加齢:男性でも性ホルモンの変化や、栄養のアンバランス、運動不足などにより骨粗鬆症を引き起こします。
栄養のアンバランス:カルシウム、タンパク質、ビタミンD、ビタミンKの不足や、腸から栄養を吸収する力が落ちると、骨量は減りやすくなります。
運動不足、喫煙、飲酒:運動不足になると、骨形成が低下し、骨の吸収が進むことで骨量が低下します。疫学的な調査等から、喫煙や過度のアルコール摂取も、骨粗鬆症の危険因子とされています。
他の病気や薬:副甲状腺機能亢進症などの内分泌系の病気や、糖尿病、関節リウマチなどの病気、ステロイドなどの薬(5mg/日以上)。
遺伝や体質:両親が骨粗鬆症と診断されていたり、大腿骨近位部(頚部、転子部)骨折を起こしていたりすると、その子供も骨粗鬆症になる危険性が高いとされています。

 

骨粗鬆症が引き起こす脆弱性(ぜいじゃくせい)骨折

○ 脆弱性骨折とは
骨強度が低下して発生する骨折で、「微細な外力によって引き起こされる骨折」と定義されています。
微細な外力とは、立った姿勢からの転倒か、それ以下の外力のことです。
※ 交通事故や転落事故といった外傷性骨折と区別されます。

脆弱性骨折は、特に椎体(背骨)、大腿骨近位部(足の付け根)、橈骨(手首)、上腕骨近位部(腕の付け根)に多くみられます。

【椎体骨折】
体を支える背骨(首、胸、腰)のうち、椎体と呼ばれる部分の骨折のことです。
この骨折の中で、体の重みで押し潰れてしまうものは「圧迫骨折」と呼ばれ、背中や腰が曲がる原因の一つです。
さらに、1ヵ所骨折するとその周囲の椎体骨折を生じやすくなります(骨折連鎖)。
発症時の疼痛が軽い場合が意外に多いため、本人が自覚症状を持たない場合もあり、注意が必要です。

【大腿骨近位部骨折】
疼痛と歩行困難を主訴に受診し、多くは手術を必要とします。
早期からの集中的なリハビリテーションによって、術後6ヶ月で約半数の患者は骨折前の歩行能力を獲得出来たとの報告があります。一方、半数以上の骨折患者は歩行能力が低下し、要介護状態や寝たきりになると言われています。

【橈骨遠位端骨折】
多くは転倒時に手のひらを付くことにより受傷し、手首の強い痛みと腫脹を主訴に受診します。骨折分類により治療法は異なり、整復しシーネやギプスで固定する保存療法を行う場合と、手術を必要とする場合とがあります。疫学的には、男性は加齢による発生率の上昇はなく、女性は50代後半より高くなり、80歳代以上では逆に低下がみられます。

【上腕骨近位端骨折】
転倒時に手や肘をついたり、肩をぶつけたりすることで受傷し、強い痛みと患部の腫脹、変形、挙上困難を主訴に受診します。骨折分類により保存療法か手術療法か選択されます。肩関節は、拘縮しやすい関節なので、保存的治療、手術的治療ともに、骨折部の安定性を得ることにより早期にリハビリテーション(可動域訓練)を行うことが大切です。女性では閉経後の50歳以降徐々に増加し、特に70歳代から加齢とともに直線的な増加を辿ります。男性も加齢とともに上昇を認めますが、発生率は女性の半分です。

 

「骨折連鎖」  -繰り返される骨折-

○ 骨折連鎖とは

【骨折連鎖の考え方】
1.脊椎圧迫骨折を起こした高齢者は、次に大腿骨頚部骨折を起こしやすい(別部位
2.一側の大腿骨頚部骨折を起こした高齢者は、次に反対側の大腿骨頚部骨折を起こしやすい(反対側
3.母親が骨折を起こした娘は、高齢になると骨折しやすい(世代間


”過去の骨折歴”と”家族(親)の骨折歴” は骨折のリスク要因です。

過去の報告から、骨折回数が多いほど、その後の骨折リスクが高いことが知られています。
国際骨粗鬆症財団は「STOP AT ONE(一回で止めよう)」を合言葉に、骨粗鬆症治療の啓発に取り組んでいます。

 

脆弱性骨折の危険因子とFRAX

○ 脆弱性骨折の主な危険因子
・ 低骨密度
・ 既存骨折
・ 喫煙
・ 飲酒
・ ステロイド薬の使用
・ 骨折の家族歴
・ 低体重

 

○ FRAX(フラックス)とは?

FRAXは、2008年にWHOが発表した骨粗鬆症の評価指標(ツール)であり、上記危険因子を用いて、今後10年間の骨折リスクを評価することが可能です。
「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015」において、薬物治療を開始する基準の一部を担っています。

当院では、専用の計算機を整形外来、病棟などに設置しており、いくつかの簡易な質問に回答するだけで、すぐにFRAXが算出可能です。

 

WHO骨折リスク評価ツール(外部リンクへ)

 

 診療科一覧へ戻る

診療科の紹介