デュピュイトラン拘縮   -最新の酵素注射療法-

デュピュイトラン拘縮とは

デュピュイトラン(Dupuytren)拘縮は、手掌から指にかけてひきつれができ、徐々に指が伸ばしにくくなる病気です。手のひら(手掌)の皮下にある手掌腱膜の線維(コラーゲン)が過剰に増殖し、拘縮索(こうしゅくさく)が形成されることが原因です。

典型的なデュピュイトラン拘縮

病気が進行すると指が曲がって伸びなくなり、日常生活に支障をきたします。
※ 日常生活の例:机に手をつく、手洗いや洗顔、握手、大きなものを掴む、車の運転、手を使うスポーツなど

 

最新治療:酵素注射療法(コラゲナーゼ注射療法)

従来、この病気には手術しか治療法がなかったため、新しい治療薬の開発が期待されていました。

今から15年以上前、Hurst博士らは、ある細菌が分泌するタンパク分解酵素(コラゲナーゼ)がデュピュイトラン拘縮の治療に有効であることを発見しました。この新しい酵素を用いた治療「酵素注射療法」は、アメリカでは2010年からFDA(アメリカ食品医薬品局)により認可され、既に6万人以上に使用されています。

商品名「ザイヤフレックス」注射剤は、既に世界30カ国以上で承認販売されていますが、日本でもようやく製造販売が認可され、2015年9月から発売が開始されました。当院では、この新しい注射剤による治療をただちに開始し、千葉県で初となる症例(市販後)の治療を成功させ、千葉県でも有数の使用実績を上げています。

 

【酵素注射療法の手順】

患部に薬剤を注射した翌日、指の伸展処置(事前に局所麻酔を施行)を行います。

当院では、処置後の疼痛を緩和させるため、消炎鎮痛剤の内服薬を処方しております。

病状に応じて1週間程度の指伸展位固定(アルフェンスシーネ)を行います。

処置前に指屈曲拘縮(指が曲がった状態)が強い方は、さらに伸展位固定の期間を延長するか、夜間のみ指伸展スプリント(装具)を着用していただきます。PIP関節(指の第2関節)の治療を受けた方は、酵素注射後に1週間の伸展位固定を行った後、カペナーと呼ばれる装具を着用していただく場合があります。

 

【従来の手術】

手術では、手のひらや指の皮膚を切開して、デュピュイトラン拘縮の原因となっている拘縮索を切除します。
※拘縮索:手のひらや指にある腱膜などにコラーゲンが異常に沈着して太い束(コード)が形成された状態のもの。

従来から行われている手術方法の多くは、
・全身麻酔や伝達麻酔(腕の付け根であるに注射)、入院を要すること
・比較的大きな皮膚切開を要すること
・神経血管損傷のリスク
などが問題視されています。手術の利点としては、複数指(たとえば中指・環指・小指の3本)の治療が同時に行えることです。

手術前                    手術後

 

【どちらの治療法を選ぶか?】

手術と酵素注射療法、どちらの治療でも再発の危険性があります。再発後の治療については議論の余地がありますが、外来通院で治療が行える酵素注射療法は非常に魅力的な治療です。自験例では、手術後の再発例においても、酵素注射療法は優れた治療効果を発揮しています。一方、手術後に再発したデュピュイトラン拘縮では、患部の組織硬化や癒着が強い場合があり、神経血管損傷リスクが高いと考えられます。

手術と酵素注射療法の両方を経験した患者様へのインタビューでは、「最初に受ける治療として酵素注射療法が優れている」と聞いています。

 

適切な治療を受けるために

最初に注意しなければならないことは、この優れた治療法に関する知識がまだ十分普及していないということです。

「手術でしか治らない」ということはありません。(※治療法は病状により異なります。詳しくは手外科外来にてご確認下さい。)次に、この薬剤を使用できるのは、デュピュイトラン拘縮に関する十分な知識と経験を有し、かつ治療手技および適正使用に関する講習を受講した医師と定められています。本邦では、

日本手外科学会認定 手外科専門医 であること、かつ

「デュピュイトラン拘縮酵素注射療法」適正使用講習を修了した医師

 

 

に限られます。

当院の手外科外来では、「まだ何とか使えているから…」「入院や手術が怖い」といった理由で治療をためらっていた方に、最新の酵素注射療法を含め、最適な治療法を提案します。

 

酵素注射療法の実施施設について

当院は、デュピュイトラン拘縮に対する酵素注射療法の実施施設です。

 

【参考】デュピュイトラン拘縮研究会

実施施設紹介:
http://www.dck.jp/general/facility.html

適正使用講習修了医:
http://www.dck.jp/general/doctor.html

※ デュピュイトラン拘縮研究会について:酵素注射療法の適正使用の浸透並びに推進を唯一の目的として、一般社団法人日本手外科学会と開発会社である旭化成ファーマ株式会社の共催により設立されました。ホームページを通じ、適正使用講習を運営しています。また、実地講習会の開催、酵素注射療法の実施施設の紹介を行うなどして、本療法の適正な普及を目指しています。

当院における適正使用講習修了医(手外科専門医)の紹介

医師

主任部長 國府幸洋

学歴

筑波大学 H15卒

所属学会

日本整形外科学会        日本最小侵襲整形外科学会
日本手外科学会         日本整形外科超音波学会
日本肘関節学会         国際手外科学会連合
日本創外固定・骨延長学会    日本整形外科超音波研究会
日本マイクロサージャリー学会  東日本手外科研究会
柏市整形外科症例検討会(幹事)
東葛北部外傷・関節病研究会(世話人)
AO (Arbeitsgemeinschaft für Osteosynthesefragen/ ASIF: Association for the Study of Internal Fixation) Trauma (Member)

認定等

日本整形外科学会専門医
日本手外科学会専門医
日本整形外科学会認定リウマチ医
日本整形外科学会認定運動器リハビリテーション医
日本骨粗鬆症学会認定医
日本リウマチ財団登録医
デュピュイトラン拘縮酵素注射療法適正使用講習修了
AO Trauma principles, advances course, Masters course修了
AO Trauma Hand & Wrist, Cadaver course修了
身体障害者福祉法指定医(肢体不自由)
臨床研修指導医

当科における酵素注射療法による治療例

【酵素注射療法 症例1「MP関節」】

治療前

治療後(小指:3週間)

 

 

 

 

 

【酵素注射療法 症例2「PIP関節」】

治療前

治療後(小指:3ヵ月)

 

 

 

 

 

【酵素注射療法 症例3「PIP+MP関節」】

治療前

治療後(小指:2週間)

 

 

 

 

 

【酵素注射療法 症例4「他院手術後の再発例(2指病変:MP、PIP関節)」】

治療前(他院での手術後9年)

治療後(中指:3ヶ月、小指:1ヶ月)

 

 

 

 

 

 

【酵素注射翌日の指伸展処置】

 

 

リハビリ

リハビリに関しては、手外科専門医と手外科担当リハビリスタッフ(作業療法士、理学療法士)とで毎週カンファレンスを行い、リハビリ方法と進捗状況について検討を行っています。なお、当科のリハビリスタッフは、手外科に関する幅広い分野の治療に積極的に関わり、学会や講演活動にも積極的に参加しています。

 

 

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