内視鏡外科 胃がんに対する腹腔鏡下胃切除術
胃がんに対する腹腔鏡下胃切除術は、その有用性が認識されて積極的に行われています。私たちも当初から、手技の安全性を高めるために、手順の合理化を追求してきました。以下に実際の手術の手順を示します。
①腹腔鏡操作の準備
おなかに5mm~12mmの小さな穴を6か所あけ(図1のA~F)、そこから内視鏡と細い手術器具をおなかの中に入れます。内視鏡には特別なカメラを取り付けて、その画像をテレビモニターに映し出します。モニターに映った患者様のおなかの中を見ながら、手術を進めます。おなかの中には二酸化炭素ガスを注入してふくらませます。これを気腹(きふく)といいます。気腹により手術に必要なスペースが確保できます。
②腹腔鏡下にリンパ節郭清と胃切除
胃を栄養する血管に沿ってリンパ節も存在します。がんの手術では、転移の可能性のあるリンパ節も含めて切除する必要があります。そのため、胃に入る血管(図2、図3)をクリップで確実に処理してから切離してからリンパ節を切除します(図4)十二指腸切離、口側胃切離を器械で行い、病変部を切除します。
③腹腔鏡下吻合術
残胃と十二指腸の吻合を腹腔鏡下に器械で行います。
おわりに
このような手順で、胃癌に対して腹腔鏡を用いた手術を行っています。平均手術時間は約2時間40分で、通常では術後10日くらいに退院が可能になります。 創が小さいので痛みがあまりなく、手術の翌日でも背中を伸ばして歩くことができます。 創もいずれ目立たなくなります(図8)。
(諏訪達志)