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診療内容

消化器科 食道がんについて

食道とは

のど(咽頭)から胃の間にある管状の臓器で、成人で大体25 - 30 cmくらいあります。

頚部食道、胸部食道、腹部食道に分かれています。がんができやすいのは、胸部食道の中部から下部です。

食道の壁は厚さが約4 mmくらいですが、各層があり、内腔側から、粘膜、粘膜下層、筋層、外膜に分かれています。ほとんどの癌は粘膜の表面の上皮から発生します。

食道がんについて

男女比は6 : 1で男性に多く、年齢では60歳以後に多い病気です。生活習慣とも関係があり、喫煙と飲酒を共に嗜む人では発生率が9倍になります。食道がんは胃がんの8分の1くらいの発生率で、高齢化と共にやや増加してきていますが、その治療成績は向上してきています。

食道がんは粘膜から発生しますが、食道の壁はリンパ管が豊富なため、がんが粘膜下層に及ぶと、リンパ流に沿ってがん細胞が移動して、リンパ節に転移する頻度がふえてきます。リンパ流には、食道に沿って上方向と下方向のものがあり、手術ではリンパ節も切除すること(リンパ節郭清)が重要になってきます。

食道がんの進行度

食道がんの進行度(病期)については、以下の表のように、壁の深達度と転移の程度によって、病期0から病期IVbまでに分類されます(日本食道疾患研究会編「食道癌取扱い規約」)。その病期に応じた治療を選択することが重要です。

食道がんの診断が内視鏡での組織診断で確定すると、その病期を治療前に推定するために、頚部から腹部までのCTや、超音波検査、必要に応じてMRIなどを行います。

治療

主な治療に、内視鏡的治療、手術、放射線療法、化学療法(抗がん剤)があります。診断がつき、画像で病巣の範囲が明確になれば、病期が推定できます。患者さんの全身状態を評価した上で、各々のケースでどのような治療が実際に可能であるか、また、その副作用や合併症などについてお話します。そして、最終的には、ご本人ご家族が希望される治療方法を選択することになります。

以下に治療方法について述べます。

内視鏡的治療
病期0の粘膜がんにおいて行っています。内視鏡でヨード染色を行うと、病巣のみが不染帯を示すので、その部分の粘膜下に薬液を注入して隆起させ、隆起した部分を中心に病巣をなるべく一括に、吸引して細いワイヤーで締め付け、通電して止血しながら切除する方法です。大体15分くらいの処置です。通常、そのあとは一日程度食事を控えていただきますので、短期の入院を要します。合併症として、出血、食道穿孔などをおこす可能性も少ないながらあります。
手術
主に、病巣の完全切除が可能と予想される場合に適応となります。
病期Iと病期IIの場合、手術治療の効果は良好です。
病期IIIの場合には、放射線療法や抗がん剤と組み合わせて行うことが多くなります。術前にT4(他臓器浸潤)が予想された場合には、原則的に手術は行いません。

手術の方法は病巣の位置により、異なります。

1.頚部食道がん
頚部食道を切除して、咽頭と胸部食道の間に空腸の一部を移植します(遊離空腸)。血管吻合を行い、空腸への血流を確保します。頚部リンパ節郭清も行います。ただし、頚部には重要な血管や神経も多く、発声や嚥下などの機能を温存する必要があるため、最近では、手術治療よりも化学放射線治療(抗がん剤と放射線を同時に行う治療)を行うことが多くなってきています。
2.胸部上部食道がん
まず右開胸を行い、縦隔(胸部の中央の部分)のリンパ節郭清を行います。胸部上部において、食道は気管に近く、手術では注意を要します。最近では、胸腔鏡を使って上縦隔リンパ節郭清を補助することも、必要により行っています。胸部食道を全摘して、通常の場合においては、再建臓器として胃を用います。開腹を行い、腹部のリンパ節郭清を必要に応じて行います。胃の一部を切除して管状にしたもの(胃管)を血管と一緒に、横隔膜の隙間を通して、もとの食道があったところにもってくるようにします。頚部のリンパ節郭清を行ってから、頚部に胃管を挙上して、頚部食道と胃管をつなげます(頚部食道胃管吻合)。胃がない方では、再建臓器として、主に小腸、ときに大腸を用います。
3.胸部中下部食道がん
多くの場合に、まず開腹を行い、腹部のリンパ節郭清を行いながら、胃の一部を切除して管状にしたもの(胃管)を作成します。次に右開胸を行い、縦隔のリンパ節郭清を行います。最近では、胸腔鏡を使って上縦隔リンパ節郭清を補助することも、必要により行っています。胸部食道をほぼ全摘して、横隔膜の隙間から胃管を胸腔内に引き上げてきて、頚部食道に近い胸部上部食道と胃管をつなぎます(高位胸腔内食道胃管吻合)。上縦隔のリンパ節に転移が疑われた場合には、胸部食道を全摘して、頚部リンパ節郭清を追加することもあります。胃がない方では、再建臓器として、主に小腸、ときに大腸を用います。
4.腹部食道がん
開腹を行い、胃の周囲のリンパ節を確認します。胃に近いリンパ節に多くの場合に転移があり、根治性の観点から胃全摘をした方がいいと判断されることもよくあります。その場合、横隔膜を腹部から切開して、下縦隔のリンパ節郭清を行い、胃全摘して腹部リンパ節郭清を行ってから、空腸(上部小腸)と胸部下部食道をつなぎます(胸部下部食道空腸吻合)。胃の中下部を残せる場合には、残胃と胸部下部食道をつなぎます(胸部下部食道残胃吻合)。

手術の合併症と当院の手術の特色については、後に別項で述べます。

放射線療法

放射線療法は食道を温存することを目標にした、局所治療です。放射線を身体の外から照射する方法(外照射)を主に行っています。脊髄麻痺を回避するため、週5日6週くらいが最大限となります。根治的な目的の場合では、転移の疑われる所属リンパ節も含めて照射野を設定するため、広い範囲に照射することになります。

副作用として、白血球数や血小板数の減少(骨髄抑制)や皮膚炎、放射線肺臓炎(肺繊維化)、食道炎などがあります。また、頚部に照射した場合、咽頭の違和感や疼痛がおこることもあります。腹部に照射した場合には、腹痛、嘔気、食欲低下、下痢などがおこることもあります。治療が終了して時間がたってから心臓や肺に障害が起こることもあります(晩期障害)。副作用に出現には、個人差が大きく、もしひどい場合には治療を中断することもあります。多くの場合、時期が来れば自然に回復します。

放射線療法を行う際に、同時に抗がん剤治療を追加した方が、放射線療法単独の場合に比べて、効果があることが、最近わかってきました。根治を目的とする場合は、放射線療法と抗がん剤治療を同時に行う方法(化学放射線療法)が勧められます。

がんの拡がりのため、切除不可能と判定され、遠隔転移がない場合に根治的化学放射線療法の適応となることがよくあります。化学放射線療法の効果を判定して、癌が縮小しているがまだ残っている場合に、手術が可能であることもあります。

また、最初に手術を行い、がんが残っている可能性のある場合に、手術後にその部分だけに放射線治療を追加することもあります(再発予防照射)。

化学療法(抗がん剤による治療)

抗がん剤は、全身投与するため、手術や放射線治療と異なり、全身療法として位置づけられます。しかし、抗がん剤単独での効果はそれほど大きくはありません。可能な限り、放射線治療と組み合わせるようにしています。多くは遠隔転移がある場合や再発した場合に行います。

現在のところ、フルオロウラシルとシスプラチンの併用療法が最も有効とされています。これらの薬剤を点滴の中に混ぜて5日間続けて注射します。これを1コースとして数週間の休みをはさんで何回か行います。効果の判定を行い、効果がなければ他の薬剤に変更します。

副作用には個人差がりますが、嘔気、白血球数や血小板数の減少(骨髄抑制)、食欲不振、下痢、腎障害、色素沈着、口内炎などがあります。嘔気を軽減させる薬剤の投与も予防的に行っています。

手術の合併症

手術のあとに発生する合併症として、肺炎、縫合不全(吻合部のほころび)、肝障害、腎障害、不整脈、心機能低下などがあります。これらの発生率は手術前に臓器障害をもっている患者さんでは高くなります。

食道切除術後の肺炎の合併率は、全国的には20%前後と報告されています。食道胃管吻合の縫合不全の合併率は、全国的には15%前後と報告されています。

自験例(諏訪)では、2002年4月から2008年4月までの集計で、食道切除術後の肺炎は、約6%で、縫合不全は2%以下でした。

手術の特徴

食道外科手術を専門としてきて、以下のような工夫を行ってきました。

1.食道を切除するときに右開胸を要しますが、筋肉温存、肋骨非切離での小開胸操作に努めています。

後背筋は完全に温存して、前鋸筋もほとんど切離しません。このような大きな筋肉を温存し、さらに開創器の改良がすすみ、数年前より、完全に肋骨非切離での操作が可能になっております。このことで手術後の呼吸機能回復の迅速化が得られています。そして、呼吸器合併症の低下にもつながっています。

2.食道切除後の再建経路として、術後の摂食が良好な後縦隔経路再建や高位胸腔内吻合による再建を行います。

従来から広く行われてきた胸壁前経路再建や胸骨後経路再建にはいろいろな問題が指摘されてきました。

胸壁前経路再建では、前から胃の膨らみが見えるという美容上の不利益と、経路が長いため、吻合部の血行不良による高い縫合不全合併率が問題でした。

胸骨後経路再建では、不整脈の出現や、胸骨と心臓の隙間の狭いスペースに胃があるため、摂食不良が問題となっていました。

後縦隔経路再建や高位胸腔内吻合による再建では、食べた物がストレートに胸腔内を下に流れるため、術後の摂食が良好です。縫合不全の合併も少なく、術後成績も良好です。

ただし、胸壁前経路再建は、再建臓器に何か問題が生じた際に前方からの処置が可能であるという利点もあり、手術リスクのある患者さんの場合には適応となることもあります。

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